G「一日中私の名前を呼び続けているのは誰だ?」
Y「私ではないですよ。どなたか、ゴッホさんのお名前を何度も呼んでいますか?」
「・・・・」
Y「気のせいのようですね。」
「ゴッホ、ゴッホ、ゴッホ、ゴッホ、ゴッホ、ゴッホ、ゴッホ、ゴッホ、ゴッホ、ゴッホ、、ゴッホ、ゴッホ、、、、。」
G「わーまただ。もうこんな耳なんかついているから、変な声が聞こえてくるんだ。耳などいらない。切ってしまいたい。Yさん、私の耳を切ってくれないか?」
Y「あ、お隣のお部屋の人の咳ですね。幻覚じゃありませんよ。だからお耳は大事にしときましょう。切りません。安心してください。」
G「あれは咳か?人間はあんな大きな重い咳をずっとするものなのか?普通の咳ではないぞ。」
Y「そうですね。大変お気の毒です。」
S「本当にうるさいぞ。隣の部屋の者を打ち据えて参れ。棒打ち100回じゃ。」
M「そんな、恐ろしい。この前お茶の時間のフルーツをほんの少しつまみ食いしてしまった時の棒打ち2回で、1週間歩けなくなったのよ。数十回でも内臓が破裂するのに、100回なんて死んでしまう、、。」
S「構わん。打ち据えて参れ。死んでも構わん。」
Y「まあまあ、そんなにお怒りにならないでください。お体に触ります。大変申し上げにくいのですが、実はそういう力で押さえつけるような物言いは、現代ではあまり通用しないようです。」
S「ではどうするのだ?」
Y「私もはっきりと申し上げるのが難しいのですが、柔道っていうか、北風と太陽のようというか。」
S「もっと解らぬ。Yよ。試しに其方(そち)がやってみるがよい。出来なかったら其方も棒打ちじゃ。」
Y「わかりました。とても難しい現代語を使うので、西太后様にはお分かりにならないかもしれませんが、お気になさらないでください。」
Y「お隣の方、病院へ行かれましたか?お大事に!」
S「Yよ。そんな生ぬるいことで止むと思うか?」
O「あ”、なんて、なんて恐ろしいことを、、、。」
Y「岡本さん、お分かりくださってありがとうございます。でもご安心ください。怖いエネルギーはどこかへ流れて飛んで行きました。」
S「お前たち、私をからかっているのか?」
O「滅相もありません。難しい言葉選びでした。ほんとによかった。」
Y「これでもう大丈夫です。ゴッホさんも西太后様もお健やかにお過ごしくださいませ。」
S「本当だ、咳払いが小さくなったな。」
O「隣の男は、震え上がっているはずです。」
Y「はい。そうですね。お気の毒ですが。」
O「それにしてもいい天気だな今日は。」
Y「はい。西太后様、お散歩などされてはいかがでしょうか。今日はとても山も風車もきれいに見えましょう。」
S「ではそうとしよう。」
Y「いってらっしゃいませ。」
みんなでSを見送った。
Y「岡本さん、ありがとうございました。」
「ドタドタドタドタ、ドタドタドタドタ、ドタドタドタドタ、、、、。」
O「上の階の人の足音もすごいな?Yさん、これはどうするつもり?」
Y「そうですね、、、。西太后様がお戻りになる前に上の階の方にもお伝えしておきましょう。」
Y「上の階の方、お歌も元気でお上手ですよ!」
O「なかなかやるね。柔道。」
Y「まだまだです。これからも精進いたします。」